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果たして、電車の網棚に横たわる女は幽霊だったのだろうか?

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僕は、いわゆるえる人ではありません。

これまでにそういった心霊体験はしたこともないし、もちろん、幽霊だって見たことないです。

僕ばかりか、僕の周りや友人、家族においても霊感があるなんて話は聞いたことがないんですよね。

でも、今、僕は実際に視えちゃってます。

幽霊といえるであろう存在を目の当たりにしているんです。

さて、ここらで状況を整理しておきましょうか。

僕は今終電の電車に揺られてます。

日曜日の終電は人がまばらで、僕は一番端っこの席にこうして座ってます。

この車両にはおよそ10人ほどが座ってるんですが、異変に気が付いたのはついさっきのこと。

僕はかれこれ1時間ほど電車に揺られてます。久々に実家に帰っている最中です。

そうして、本を読んでいる間にいつの間にやら寝てしまっていたようで……。

ふと目を開けると、眠る前と明らかに違っている点がありました。

それは、「人がおかしなところにいる」ということ。

もちろん、電車の車内にいるわけなので「人がいちゃおかしい場所」はある程度限定されてきます。

別に、ここで場所当てゲームをするつもりは毛頭ありません。

早速ネタばらしをすると、電車の荷物を置く場所、つまり、網棚に横たわるようにして人間がいたんです。

いつ乗ったのか、どうやって登ったのか、いつからそこにいるのか、なぜそんなところにいるのか。

次から次へと疑問がどんどんと湧き出ていきましたが、それはやがて興味へと変わっていきました。

どうやらこの車両にいる人間はみな"一人"のよう。

各々がスマホをいじっていたり、本を読んでいたり、ゲームをしていたり。

そして、僕はとあることに気がつきました。

みんな、網棚に乗っている人を気にしているなぁ』、と。

今まで幽霊を見たことがない僕がこういうのもなんですが、アレはおそらくこの世の存在ではないです。えぇ、きっと。

しかし、この場にいるすべての人間がアレを認識しているということはどういうことなのでしょうか?

髪はボサボサで割と長め。垂れた髪の毛が席の脇の銀色の手すりの真ん中ぐらいにまで伸びてる。もちろん、その下に座っている人はいません。

髪の合間から見えるのは口元だけ。半開きの口から覗く歯は少しガタガタと並んでいて、薄っすらと黄色がかってるのがまた何とも気持ち悪い。

垂れる髪と同じようにして手はだらんと下に垂れており、その腕は細く、黒くくすんでる。

服は大きな花柄の淡い色をしたワンピース。青い花が特徴的です。

確かに生きている人間といえばそうなのかもしれません。

でも、今こうして目の前にして思うことは「やはり生きている人間とは到底思えない」ということです。

どうしてそう思うのかと聞かれると少し困ってしまうのですが、そう思ってしまうのだから仕方がありません。

スネあたりまでワンピースの布で隠れているけれど、足は裸足で薄汚れてますし……。

言い忘れていたけれど、たぶんアレは女性だと思いますね。なんというか、風貌というか、どことなく女性らしさがあるというか。

年齢は顔が見えないから確かなことは言えませんが、たぶん20代後半とかそんなん。

さっきからその女性のことをジロジロと見ているんですが、身動きひとつしようとしません。やはり、死んでいるのでしょうか。

いや、もはや死んでいるようなものだし、もし生きていたとしてもアレは死んでいるに違いないです。

でも、ただひとつ"生きているであろう"と判断できる材料としては、電車のトビラが開くたびにその半開きの口がガチガチと鳴ること。

トビラがズーッと開く度にガチガチと音を鳴らし、閉まるとスッと止む。

もしもこれが幽霊なる存在だとしても、何の目的があってそこにいるのか、何の得があってそんなところにいるのかさっぱりわかりません。

特にこちらに害があるわけではないけれど、どことなく不気味だし、決して気分がいいものでもないですし。

とはいえ、僕は今座っている席を移動するつもりはありませんし、他の乗客も同じ気持ちのようですね。

しかし、気になるものは気になるようで、僕と同じようにチラチラとその女性の方を見たりしてます。

その女性は僕の目の前の席の上の金網にいるので、距離にするとほんの1mちょっとというところ。

変な匂いがするとか、変な時空の歪みなんてものは一切ないです。

とにかく、"そこにいるだけ“。それがなんとも不気味なわけで。

眠気による変なテンションのせいもあって、その女性に声をかけようと一瞬悩んだりもしたけどやめておきました。

いっときの好奇心で呪われたり祟られたりでもしたらたまったもんじゃないですからね。

まぁ、このあとの動向は気になるけれど明日も朝早くから仕事なので大人しく帰ることにします。

たぶん、これが幽霊であれ、変質者であれ、いずれ噂になる時が来るでしょう。「Twitter」なり、「2ちゃんねる」なりで。

僕が降りる駅はこの次。

降りるときが一番彼女に近付いてしまうタイミングなのですが、急に飛びかかってきたりはしませんよね?

はたまた、僕と一緒に電車を降りるということはないですよね?

そんな不安を抱えつつ、電車は最寄駅に到着しました。

トビラがスッと開くと、それに呼応するように網棚の上の女はガチガチと激しく歯を鳴らす。

その音に見送られながら僕は電車を降りました。

とりあえず、着いてきてはいないようですね。よかった、よかった。